半月後。
彼は有言実行通り、機長昇格試験に合格した。
正式名称は定期運送用操縦士免許、実技審査に合格すると機長になれる。
郁さんから『仕事が終わったら連絡して』とメールが来ていた。
とうとうこの日が来たようだ。
生まれて初めてのプロポーズ。
大好きな彼から、事前にプロポーズします宣言を貰ってるから、間違いない。
どうしよう。
まさか、今日だとは思ってもみなかった。
定時では無理そうだけど、出来るだけ早めに帰宅してシャワーを浴びないと。
彼からの連絡を貰って以来、そわそわして仕事にならない。
幸いにも、今日はオペが一件も入ってない日。
神様は私に気を遣ってくれたらしい。
***
『19時半頃になります』
18時半に仕事を終え、自宅へと向かう途中で彼にメールを打つ。
『今終わりました』だなんて打ったら、職場に迎えに来られても困るし。
そこら辺は悪知恵が働いた。
帰宅して、シャワーを浴び、念入りにメイクをし直す。
可愛らしいワンピースに着替え、ロングカーディガンを羽織る。
彼から貰った指輪を指に嵌めて、ハッと気づく。
既に指輪貰ってるけど……?
え、でも、プロポーズするって言ってたよね?この前。
だから、あんな言い方だったのかな?
きっとそうだ。
夕食でも食べながら、一応言葉で言ってくれるだけなんだ、多分。
何もかもが予定通りと違う路線を飛行して来たため、自分でも何が何だか分からなくなってきた。
ということは、そんなにも気取らなくていいってことか。
なぁ~んだ、無意味に気負い過ぎたかも。



