機長の昇格試験を受ける為にこの一年半ずっと乗務を最優先して来たってこと。
更に、その昇格試験に合格したら、私の両親に挨拶しに行くって。
え?
どういうこと?
「彩葉?」
「……はい」
「聞いてるか?」
「うん、聞こえてる」
状況は理解出来たんだけど、彼は何が言いたいんだろう?
うちの両親に挨拶………、挨拶?………挨拶ッ!!?
「それって、もしかして……」
「順番が逆か?……だよな。俺ら最初から何もかもが順番通りじゃないから、何か調子狂うな」
「………ん」
ほんの少し照れてる郁さん、珍しい。
でも、彼の気持ちはよく分かった。
数分前まで、もしかしたらもうダメなのかな?とか考えてた私にとって。
夢に描いてたコースを完全にワープした気がする。
「とりあえず、昇格試験が終わるまでは気を抜けないけど。合格したら、その時にちゃんとプロポーズするから」
「えっ?!」
「何、驚いてんの?もしかして、嫌だとか?」
「あ、ううん、全然、そういうんじゃなくて……」
プロポーズします宣言。
普通するものなの?
そりゃあ、驚くでしょ。
もしかして、されるのかな?とか感じる人はいても。
今からしますよ?的な雰囲気を知ってる人は稀だと思う。
「郁さん」
「ん?」
「うちら、絶対普通じゃないですよね」
「だから、いいんじゃないか?誰かと同じだなんて、面白くないだろ」
「………」
あぁそうだ、忘れてた。
この人、サイコだったよ。
まぁ、イカれたサイコなんじゃなくて、私限定の素敵なサイコなんだけどね。



