「…………てっ」
「ん?…………今、何て?」
蚊の泣くような弱々しい声を聞き漏らさないように、彼女の口元に耳を寄せると。
「………手が……繋ぎたいですっ」
「っ……」
フフッ。
ボディタッチを控えていた努力が、漸く報われる時が来たか?
顔を紅潮させ、恥かしそうに俯く彼女。
左手には鞄を持ち、右手は俺のジャケットの裾を掴んでいる。
俺はさり気なくその右手に手を滑らせ、優しく手を握った。
そんな俺の手をじっと見つめる蘭。
俺はわざとらしくギュッと握った。
「行こっか」
「……はい////」
やべぇ。
マジでヤバいかしれない。
手を繋ぐだけで、俺、相当ドキドキしてる。
今までもっと凄い事を散々して来たってのに、気持ちがあるだけでこんなにも胸が高鳴るって……。
触れてる指先から脈動が伝わるんじゃないかと気が気じゃない。
しかも、意識し過ぎて変な汗が出て来た。
一先ず目的地に急がないと、理性の手綱が今にも切れそうだ。



