一颯くんを困らせたい訳じゃない。
言いたく無い事なんて、誰にだって1つや2つあるものだし。
だけど、あまりにも彼から笑顔が消えてると、心配になってしまう。
本当にどうしたんだろう?
腑に落ちない私だけど、彼を問い質してまで聞く勇気はない。
聞いた所で、私に対処出来るとも思えないし……。
彼が自分から言ってくれるまで、私は温かく見守る事にした。
本間家に戻ると、既に家の中は暗くなっていた。
深夜1時半を過ぎようとしている。
恐らく、もうお休みになられているのだろう。
「寿々さん、身体が冷えたでしょ。お茶でも淹れるよ」
「うん、ありがと」
彼はキッチンへ、私はリビングへ。
すると、キッチンから一颯くんのボヤキが聞こえて来た。
「あぁーッ、ったく!!何で“片付ける”って事を知らねぇんだよっ!いい大人が3人もいて!!」
「えっ、どうかしたぁ?」
「いや、何でもない。寿々さん、エアコンと床暖のスイッチ入ってる?」
「あっ、うん!両方とも入ってるみたい」
帰宅後を気遣って、入れておいてくれたようだ。



