一颯くんの表情があまりにも真面目だから、無意識に頬が引き攣り始めた。
だってこんな坂があると知ってれば、踵の高いショートブーツで来ようなんて思わなかったもん。
思わず彼の手をギュッと握り、
「とりあえず、頑張れるだけ頑張ってみる」
「………ん」
彼の顔を見上げると、手を握り返し優しく微笑んでくれた。
想像を超える急な坂を上り終えると、その先には果てしなく続く階段がそびえていた。
「嘘っ……」
「だから言ったでしょ?」
「………」
これって、一山越えるんじゃないの?
そびえ立つ階段を見据え、唖然としていると。
スッと真横から腰に手が回された。
そして、しっかりと抱き寄せられる。
「限界になる前に言ってね?」
「………うん」
彼に身体を支えられ、私達はそびえ立つ階段を上り始めた。
上り続けて、15分。
漸く目的地に到着したようだ。
来た道を見下ろす形で振り返ると……。
参道を照らす提灯の灯りが2本の線になって続いている。
そして、その先には……。
先程までいた住宅街の灯りが広がっていた。
キラキラと輝く星空と眼下に広がる夜景を一望出来るお寺のようだ。



