Special Edition



一颯くんは、私がプレゼントしたマフラーを首に巻きつけ、

私はすっかり私物化した彼のマフラーを巻く。


すると――――。


「一颯」

「ん?」

「気を付けて行けよ?」

「………ん。ってか、何?3人揃って、不気味なんだけど」


3人は含み笑いで私達を見上げている。

一颯くんが言うように、少し不気味な気がするんだけど……。


「んじゃあ、行って来る」

「行って来ます」

「行ってらっしゃ~い♪」


ほんの少しテンションの高いお母さんが手を振る中、私達は本間家を後にした。


本間家の裏手にある坂を上り、突き当りのT字路を左折して。

暫く進むと再び急な上り坂がある。

その手前には『鳳光寺⇒』と書かれた看板がある。


私は一颯くんに手を握られ、ゆっくりとした足取りで坂を上り始めた。


「寿々さん、辛くない?」

「ん、大丈夫だよ」

「辛かったら言ってね?」

「休憩してくれるの?」

「いや」

「ん?」

「抱えて上る」

「………え?」

「だから、寿々さんをお姫様抱っこして上るから」

「…………大丈夫、1人で歩ける」

「でも、結構な距離だよ?」

「ホント?」

「うん。看板に騙されると、痛い目見るよ」

「………」