「あらあら、痴話喧嘩はダメよ~?」
「あぁっ?!誰のせいだと思ってんだよっ!ってか、喧嘩なんてしてねぇーし!」
一颯くんのちょっぴり荒い口調も新鮮で、思わず笑みが零れてしまう。
来るまでは本当に緊張して心臓が壊れるかと思ってたけど、こんなにも温かく迎えて貰えて、私って倖せ者だ。
私へ視線を移した彼にニコッと微笑むと。
「そろそろ、出掛けるか」
「え?……あぁ、うん!」
「出掛けるって、どこに~?」
「鳳光寺に」
「もしかして、鐘つきに行くの~?」
「あぁ」
一颯くんの言葉に反応するように腰を上げたお母さん。
それを見た彼はすぐさま……。
「2人で行きたいから、ついて来んな!」
「えぇ~、いいじゃな~い」
「2人だけにするっていう気遣いはねぇーのかよっ!」
「ケチ~」
「ケチでも何でも結構!!」
お母さんはプクッと膨れて、可愛い睨みを彼に向けている。
一颯くんは、そんなお母さんを完全に無視して。
「寿々さん、行こ?」
「………うん」
2人して腰を上げ、上着を羽織っていると……。
何やら3人が耳打ちし始めた。



