嬉しさを必死で堪えながら、おつまみを取り分けていると。
「でも、お父さん。こんなに可愛い寿々ちゃんが、独り身だなんて心配だわ!どこの誰だか分からない男にさらわれるかもしれないし」
「ん~、それはあり得るな」
「おいおいっ、2人共、マジでどうしたんだよっ」
両親の会話にタジタジの一颯くん。
普段見れない彼の慌て振りが微笑ましく思える。
けれど、息子の言葉も軽くスルーする2人は……。
「お式は、一颯の仕事が落ち着いてからでも遅くないけど、入籍だけ先に済ませるってのはどうかしら?ねっ?その方が安心出来るし、来年の今頃には「ちょっと!それ以上言ったら、今すぐ帰るぞッ!!」
「えっ、何で?」
「何でもクソもねぇだろッ!!そういう事は、親が決めんじゃなくて、当人同士の問題だってのっ!」
お母さんの言葉を封じるように発した一颯くん。
初めて怒る彼にほんの少し驚いてしまった。
「一颯、横……見てみろ」
「あ?」
「彼女がビビッてんぞ」
「ッ!!…………ごめん」
「ううん、私は大丈夫だよ」
ニコリと笑みを浮かべ、一颯くんの顔を覗き込む。
彼は苦笑いを浮かべていた。



