「おい、要、遅かったな」
「あら、どうされたんです?お紅茶は要らないって?」
「いや………中に入って無い」
「どういう事だ?」
「………」
聡と村岡の言葉もどこか遠くの方で言われている気がする。
心ここにあらず、そんな感じだ。
折れかけていた心が今にも完全に壊れそうになっていた。
その後は、村岡が聡と本田を送り届けると言い、
杏花は後片付けを始め、
俺はゲストルームで斗賀の寝顔を見ていた。
「おい、斗賀。ママは一体、どうしたんだ?」
スヤスヤと寝息を立てている斗賀に1人愚痴を零す俺。
情けない父親だ。
アルコールが入っているからなのか、
鼻の奥がツンとして、目頭がカーッと熱くなる。
人様の心配をするよりも、
自分の家庭の心配が先だったな。
俺は盛大な溜息を溢れさせていた。
暫くして、村岡が戻って来た。
自宅に帰っても良かったのに、
俺の事が心配で戻って来たのだろう。
「坊ちゃまは私が看ておりますので、もうお休み下さい」
「……………ん、お休み」
「お休みなさいませ」
俺は作り笑顔で部屋を後にした。



