「ホントにどうしよう」
「大丈夫だと思うけど……」
「仕方ないのはよく解ってるんだけどね、それでもやっぱり……」
「そういう相手がいれば、誰でも必然的になるモノよ」
「でも……」
何の話だ?
『そういう相手』って誰の事?
杏花の口振りだと、
どうしようもないような心境に陥ってる感じだ。
何だか胸騒ぎがしてならない。
もしかして、浮気とまでいかなくても
杏花にとって気になる存在の奴が現れたとか?
………俺はどうしたらいいんだ?
カップの中で紅茶が波打っている。
俺の手が小刻みに震えているからだ。
浮気は黙認出来ない。
勿論、俺以外の男に視線を奪われる事も許せないし、
例え、息子であっても譲れない……とさえ思うのに。
盗み聞きはするもんじゃないな。
心臓に悪い。
心が今にも折れそうだ。
俺は踵を返して戻ろうとすると、
「ホント?!」
「しっ!!斗賀君が起きちゃうわよ?」
「あっ、ごめんなさい」
突然、杏花の声に再び無意識にドアに耳を傾けていた。
………ダメだと解りつつも、その先が気になって。



