俺はキッチンの方へ視線を送ると、
案の定、俺からの合図を待っている村岡とぶつかった。
俺はもうちょとだけ……と念じながら、聡に声を掛ける。
「あのさ」
「ん?」
「拒否られないテクニックってあるか?」
「ブォッ……ゴホゴホッ……。要、なんつう話題を振るんだよ」
「だって、カズに言ったら笑われそうだもん」
「…………ったく」
そうなんだ。
やっと杏花のお許しが出て、
再び濃密な夜を過ごし始めたばかりだというのに、
何故か、ここ数日、完全に拒否られている俺。
未だかつて、女にあれ程までに拒否られた事が無く
正直、心が折れそうになっている。
だから、ここは兄貴分の聡に
何かいいアドバスを頂きたくて、
恥も外聞も捨て、俺は必死になっていた。
聡も母親である村岡が気になるみたいでチラリと視線を送る。
そして、直ぐには戻ら無さそうな気配を感じて口を開いた。
「拒否られるって、お前に限って無いだろ」
「いや、そんな事は無い」
「………だとしたら、お前が原因なんじゃないのか?」
「………俺?」



