会議が終わり席に戻ると案の定、
佐々木は吉岡に呼び出されていた。
必死に訳を説明しているようだが、
吉岡の顔色は一向に濁ったままだ。
ギョロっとした目で佐々木を射抜き、
時折、口が動いているが、怒鳴りつける事もせず、
チクりチクりと傷口を責める。
正に『ヘビに睨まれたカエル』であった…
小一時間が過ぎただろうか、
ようやく『ヘビ』の束縛から解放され、
テクテクと席に戻る。
意外なことに、しょんぼりとした様子はなく、
なんとかやり過ごし、
ギラギラした目でヘビをチラリと見た。
佐々木の打たれ強さと負けん気には、
時折、頭が下がる程尊敬に値する…
私は、自販機で冷たい缶コーヒーを二本買った。
その一本を佐々木にほいっと、投げ渡した。
それをキャッチした佐々木と目が合う。
「お疲れさん(笑)」
「あざっす(苦笑)」
言葉こそ発さなかったが
そこには確かにそんな会話があった。
缶コーヒーをプシッっと開け一口飲み込み、
たばこに火を付け、パソコンの電源を落とした。
パソコンは「チャラララン…」と音を立て画面が黒一色になると、
くわえたばこの何か言いた気な中年男の顔が映った…
「そんな顔すんなよ、お疲れさん」なんて心の中で呟きかける。
そして、いつものように1日が終わる…
さぁ、家に帰ろう。
出口で佐々木の「今日はデートだ♪デート♪」と鼻歌に追い越され、
少々羨ましくも微笑ましくもまた懐かしくもあった…
車に乗り込み、キーを回し、
エンジンを掛けるとドュルルンと勢い良く排気ガスを吐き出した。
車は会社をあとにし、
私は家路に向けてハンドルを回した。

