ただひとつ。Side Story

「…お互いに忙しいこともあるだろうけど……。颯太の考えていることがわからない。それだけで…こんなにも不安になるんだね。」



私は颯太くんにちらっと目をやった。


「…颯太くんて今交番勤務だっけ?」


「うん。今年いっぱいそうかな。」


「…へぇ~。じゃあ次は?」


「鑑識になりたいらしい。…お父さんがそうだったって。」


「…鑑識…。物的証拠とか調べたりする人だよね。」


「そう。地方の警察の鑑識は大変らしい。強盗、殺人、火事、事故、解剖に立ち会ったり、ホント…、休めないみたいなんだよね。」


「…そうなんだ。」


「…もし、そうなって配属先が決まったら……、私はどうしたらいいのかわからない。また離れてしまうことに耐える自信がないんだ。」


「…でも…、好きなことに変わりはないんでしょう?」


「…うん。変わってない。けど今はさ、会えない分だけ『好き』が積もってる。」



「…離れるっていうのは…?」


「…警察は転勤があるじゃん?多分、もう異動になると思う。何処になるかなんてわからない。そしたらさ、会う時間なんてあると思う?」


「………。」


「…だから…、颯太が颯太の道を行く限り……、自然と離れていっちゃう。」


「……。そんなの…言えばいいじゃん。その不安をそのまま伝えればいいじゃん。」


「…それはできない。負担をかけたくない。」


「負担だなんて思わないよ。」


「…思わなくても…。無理させたくない。」


「……じゃあひよりが仕事やめてついていけば?」


「…できるわけないよ。中途半端なことはしたくない。」


「…頑固者。」



けど……



私だって人のこと言えないじゃん。


ひよりに聞いて欲しいことも言えずに、自分の中でただ悶々としていただけだったじゃん。



むしろ……


ひよりは私に打ち明けてくれた。