ただひとつ。Side Story

「…なんだか、今日一日夢見てるみたいだね。」


ひよりが目をトロンとさせて、その光景を見つめている。


「…そうだねぇ…。」



お互いに、どこか夢見心地。




「…ずっとこんな時間が続くといいね。」


「…そうだね。」


「…うらやましい。」


「………。」


「これからずっと側にいれるんだもんね。」


「……?そりゃあ結婚したしね。……てか、どうした?」


「…まこさあ、さっき私に聞いたよね。何で颯太と結婚しないのかって…。」


「…うん。」



顔は一向にこっちを向かない。


キャンドルの光が…


彼女の目の中で灯っている。




「…私も颯太もさ、夢を叶えて…お互いが今いい距離にいると思ってる。」


「………。」


「…前に…、プロポーズされたよ。けど、すぐに結婚なんてできるワケなかった。」


「………。」


「…あの頃はさ、目の前の幸せを掴みたくて…お互いの存在を手に入れた喜びばかりがひとり歩きしてた。」



「そりゃあ両想いになったんだもん。当然じゃない?」


「…うん。けど、すぐに気づいた。まだまだ私達の夢は続いていくんだなって。」


「…夢…。」


「私はさ、幼稚園の先生になった。けど、たった数年勤めたくらいではなかなか認めてなんてもらえない。先生方や子供や保護者と簡単に信頼関係を築こうだなんて…到底、無理だった。それに…、颯太もそうだったよ。土日休む暇もないくらいに忙しくて…厳しい現実を知った。今はゆっくり会うこともままならない。何度もすれ違ったよ。そんな状態で結婚なんてできる訳もなくて…。お互い、そんな話もしなくなった。自分の人生に精一杯だったんだよね、きっと。」


「………。」


「…今はちょっと違う。自分にゆとりができた分だけ、相手に求めるものも大きくなった。」


「………。」


「颯太は署から召集がかかったらすぐにとんで行かなきゃいけない。休みの日でも、待機しなければならない時もある。」


「…うん。」