ただひとつ。Side Story


『ありがとう』




そんなたったひと言が…


私の胸をトクンと鳴らす。







こんな私でも、役に立つことがあったんだね。


小さな勇気は…


いつしか優しさを帯びて、


誰かの為に…、



いや、


大切な人の為に…


降り注いでいく。


大きな力を与えていく。


大袈裟かもしれないけど、


未来すらも変えていけるんじゃないかって…。


信じてみたくなる。





そう教えてくれたのは…


ひより、




あなただったんだよ。




会場の拍手に包まれて…


私は確かに、感じていたんだ。


いつも喉の奥で弾けては消えていく、本当の『言葉』。


素直になれない私の…




見ているばかりで何もしなかった私の…



本当の『心』。








うらやましくて、憧れて、嫉妬してやまなかった…


ひよりや、透子のような生き方。





…些細なことかもしれない。



でも……



今感じる、この高揚感…。


こんな嬉しさを…、



私は、知らない。





「…こっちが、ありがとうだよ。」




私は……



その、不思議な感覚を逃がさぬように…



ひよりを強く、抱きしめた。