ただひとつ。Side Story

今目の前にいるのは……



自分の道を信じて突き進む、


あの頃のひより。




強く憧れた、あの背中を……



私はまた、追っていた。





「………。」


マイクを手に持つと…


ひよりは一度、大きく息を吸い込んだ。






「…和志さん、透子さん。ご結婚、おめでとうございます。」


高砂から彼女を見下ろす二人は…


目を細めて笑った。




「ただ今ご紹介にあずかりました、市川ひよりと申します。新郎新婦とは高校で出会い、以来ずっと親しくさせていただいております。今日、この盛大なお祝いの場で二人に何を伝えようかと、ずっと考えていました。とりとめのない言葉を手紙にひたすら書き留めたのですが……、見事にそれを忘れてきてしまいました。」



会場から、どっと笑いが起きた。


けれどひよりは凛とした表情で…


二人を見つめ、言葉を続ける。






「…まあ、そんな私の性格は二人共よく知っているので、ここはご愛嬌ということでお許しいただきたいと思います。」



………。すごいな、ひよりは……。


一気に、会場の視線を奪っていく。


彼女の言葉を…


皆が待っている。





「…ですから、今ここに感じることを…、ありのままの言葉を受け取っていただければ幸いです。言葉を選ぶ余裕はないので……笑わずに聞いて下さいね。」


ふたりのご両親は…、


そんなひよりを温かく見守っている。




「……私は、透子さんよりも先に、まず和志さんと出会いました。高校1年生の頃です。彼は全く人見知りしない性格で…、今となにひとつ変わらない真っ直ぐな人でした。」


和志がウンウンと頷く。


「よく女子会にひょっこり顔を出しては…何の違和感もなく、一緒に時間を過ごしていました。冗談ばかり言って笑わせていたのを覚えています。透子さんとは…2年生の春に出会いました。隣りの席になったことをきっかけに、すぐに打ち解けて…仲良くなりました。」