ただひとつ。Side Story

「…じゃあな、ゆっくりして来いよ!」



「…うん!」



その瞳は……



真っ直ぐに、私のすぐ傍にいる【彼女】…、市川ひよりに向けられていた。



私は静かに、そんな二人を見守った。




「いいな、ひよりは…。」


「…えっ、ナニ?!」


ひよりは『どうしたの?』といいた気な顔つきで私を見た。



ひよりとは…


もう、長い付き合いだ。


中学来の親友。


だからこそ……



彼女の考えていることは、手にとるようにわかりきっていた。



「だって颯太くんみたいな彼氏、うらやましいよ?」



「…どうしたの、今頃…。」


彼女は不思議そうに首を傾げた。


今思えば……



颯太くんのあんな顔、私は初めて見たような気がする。



あんなに穏やかで、


あんなに優しくて、



あんなに……


愛おしそうにして笑う。




知っているようで、知らない二人の姿。


あの頃……



高校生の私は、ひよりと過ごす時間は沢山あったけれど……



二人が一緒の時には近づかなかった。


それがいいと…


思いこんでいたのかもしれない。



だからだろうか……



自然な二人のやりとりが…


なんとも不思議だった。



そして……



そんな彼の笑顔が私に向けられた時…



何故か、胸が鼓動を打つ。




「お似合いだなあってつくづく思う。」


「…?そうかなぁ…?」


「ねえ、颯太くんと喧嘩なんてしないでしょ。」


「何で?するする!どーでもいいようなちっちゃいことでもたまに言い合うよ。」


「…へぇ…、意外っ。そうなんだ。じゃー最近は?付き合いたてのカップルみたいな雰囲気だったし…してなさそうだね。」


「…そう?喧嘩っていうか…、うん。まあ…、したよ。」


「………。」


何だか曖昧な言い方。


…腑に落ちないな。