ただひとつ。Side Story






真っ暗になった会場。


スポットライトが彼等を照らす。


大きな拍手の中を、二人は照れ臭そうに腕を組んで歩いていた。


「…この曲、懐かしい。高校時代に流行ったよね。………。ちょっと古くない?」

楓が入場曲を聞きながら、私に耳打ちした。


「…いい曲だよね。ね、ひより。」


「…うん。」


一方のひよりは……


懐かしそうに、目を細めていた。


それもそうだろう。


この曲…、


確か高校の学園祭で、颯太くんや和志が演奏していた。


透子にとっても、ひよりにとっても、思い出の曲に違いない。



「やべ~懐かしい!」


健くんと颯太くんが顔を見合わせて嬉しそうに笑っている。


「そっか……。」



よく考えたら、みんなにとってもそうなんだ。




…あの時ー…






運命の歯車が…


ゆっくりと狂い始めていた。




ひよりは、叶内と向き合うことを決めて…、


トーコと和志は別れの道を選んだ。


楓は大ちゃんを振り向かせ…、



そして私は、叶わない恋に…


…涙した。





「………。」


胸がギュッと締まる。



私達は…


弱かった。


自分の思いとはうらはらに、何もかもが上手くはいかずに歯痒くて…


辛くて…


目を背けていた。


けれども…


なんて不思議なんだろう。


数年たった今では…、


それはただの思い出に変わり、懐かしいと笑い合っている。


弱さを認め、自分の足で立ち、はい上がって……


今の私達がいる。



誰が口にするでもない。


気づいている訳でもない。


ただ、その事実が……


人を強くした。




二人が何故この曲を選んだのか…、分かる気がする。