ただひとつ。Side Story




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「…わり…、手ェ滑った。」




颯太は不意に……



健の手から、傘を受け取った。




「……。何やってんだよ。傘の意味ないじゃん。」



一瞬…、



驚いたかのようにじっと颯太の顔を見据えた健だったが……、



まるで何事もなかったかのように、すぐさまポーカーフェイスに戻る。




颯太はそんな彼の様子に…



ホッと胸を撫で下ろした。





「…腹減った~。なあ、ちょっとあそこ行かねーか?」



「……そうだな。何、お前のおごり?」



「別にいいよ。」



「マジ?」



「おう。そのかわり、今度はお前がおごれよ。」



「………。大丈夫!次回はないから!」




一方の健も……



ようやく、安堵の息をついた。




このくらいの悪態をつく余裕が…


見られたからだった。





「…とにかく、これ以上濡れるの嫌だから早くいこーぜ。」



「ったく…、なら傘持ってこいよ。」



「…そりゃそうだ。」



「……じゃ、行くか。」



「……。おう。」







彼らの言う『あそこ』とは…




学校の近くにあるファストフード店のことである。



一対一で訪れたことはないが……


たまり場となっている、お決まりの場所だ。






二人は店の軒下まで来ると、制服のスボンの裾をたくしあげ、それから…



店内に入った。




まだ初夏だというのに、蒸し暑いせいかガンガンとクーラーが効いていて……



シャツが濡れてる二人にとっては寒さすら感じるくらいだった。




「寒み~…!」



腕を擦りながら、健は空席を探す。




「俺、探しておくからお前先買ってこれば?」



「おう、わりーな。お前、何頼む?」



「自分で行くからいい。」



「あれ?俺のおごりじゃねーの?」」



「遠慮しとく!お前に借りを作りたくねーし。」