ただひとつ。Side Story

遠くで聞こえるサイレン…



ぴくりとも動かない父の身体。





「…お父さん…?」






沢山の大人達が……



自分の周りに集まっている。




父の手が、するりと自分の掌から地面へと落ちる。



颯太が全力で投げ込んだボールを……


軽々と受け止めていたその大きな手が……



力なく、ただ雨に打たれていた。




「…いやだ…、いやだ。」




「…駄目だ、動かしては……。」




知らない男が、父を揺さぶる颯太のその手を制した。



「いやだ、…お父さん!」




絶望に似た、悲痛の叫び。