ただひとつ。Side Story

ゴロゴロゴロ……




空が……


唸り声を上げている。





その下に……




ひとつの青いビニール傘の中に、何故か二人で入る、男子高生。




「すっげ~雨っ、ちょっとお前もっと入れろよ~!」


「こっちもギリギリだ。」


「…俺なんてパンツまで浸透しそうだぜ?」


「…………。」



「…シカトかよ!」



「うわっ。最悪、透けてるし。」



「…え!嘘っしょ?」


「うっそー。」




こんな風に…


ひっきりなしに会話を続けながら…


颯太と健は、雨の中、早足で歩いて行った。





健は……



違和感を覚えていた。




自分に何か話せと言いながら、颯太の方が間髪置かずに話し掛けてくるからだ。



こんな雨の日の不可解な行動に……



疑問を抱かずにはいられなかったのだ。



「…お前さあ…。」


ついに…


健が重い口を開いた。






「…ナニ?」



「今日何かあんの?」



「…なにそれ~?」



おどける颯太をよそに、健の顔は真剣そのものである。



「…例えば、嫌なことでもあったとか…。」



「何だよ、ソレ~」



「…今日…女にでも振られたか?」



「は?」



「…ひよりちゃんとか。」



「…なんで…、ひよりちゃん…?」



「…もしかしてマジで?マジでお前ひよりちゃんに……」



「………!」




…と、


二人の目の前が……



白く光った。




颯太は反射的に……



ギュッと目を瞑る。






激しくせきたてる雨音。


稲光に照らし出される父親の顔……




『お父さん!!』



必死に叫ぶ……




幼い自分……。