ただひとつ。Side Story



連日の雨に……


颯太は少しだけ、苛立っていた。




薄暗い教室。


纏わり付く湿気。


その全てが……


彼の不安を煽っていたのだ。


今日も雨を予感させる…そんな嫌な雨雲が、漂っていた。



「……。あの…!」




移動教室で廊下を歩いていると…



一人の女子生徒が、颯太に声を掛けてきた。




「…なに?」



「…ちょと話…いいですか?」



「…いいけど……。」





後から来た健が、冷やかしを入れながら通り過ぎていった。




「「…………。」」



お互い無言になり…



気まずい空気が流れる。




「……あのさ。」



苛立ちが先だって、つい強い口調で…


颯太が口火を切った。




「…時間…、あんまないんだけど。」



「…あ。…そうだよね、ごめん。」



その女子生徒も…


ようやく口を開く。





「いきなりこんな事聞くのもおかしいかと思うんだけど…、青山くんて、彼女いる?」



「…何で?」



「楓ちゃんと付き合ってるって噂あるから…。」



「…よくそれ言われるけど…。」


「…ただの噂?」



「…そう。」


「……。そっか、やっぱり聞いてみるもんだね。…あ。私、7組の桜井千鶴っていうんだけど…。」



「………。」



彼は、この『千鶴』がひよりと話しているのを…見たことがあった。




「…もうひとつ聞いてもいい?」


「………?」



「…市川ひより、知ってるよね。」



「………!」



「…友達…ではなさそうだけど…。」



「…ああ、『ひよりちゃん』?知ってるよ。ウチのクラスの男に人気あるし。」



「…それって颯太くんも?」



「…何で?」



「…たまに…こっち見てるから。」