ただひとつ。Side Story

「…ああ。ありきたりだけど、自分が叶えられなかった『甲子園出場』。」



「…初めて聞いた、そんなの。」



「…言ったら絶対逃れられなくするって分かっていたからだろう。お前をがんじがらめにするのだけは嫌だったみたいだな。散々野球に夢中にさせときながら、勝手な奴だろ。」


「………。」



「自分に似て正義感とか責任感の強い息子だから…、なお、そう感じた。」


「……んなの…、勝手な思い違いだよ。」


「…そうか?俺はそっくりだと思うぞ。似た者親子だなあ、ホント。笑ってるさ、きっと今頃。」


「………。」



「…野球をするもしないもお前次第だ。けど…あいつはお前が自分で選択したその道を、間違いなく応援する。…そういうヤツだ。」




「………。」




「…ただ…、人の為になることばっかりを考えるのはやめろよ。たまには自分を顧みないとな。…警察っていうのは…、天職だったかもしれない。だから後悔はないと思うが……、お前の成長を、生き様を、見届けられなかったことは…死んでも死に切れなかったろうなあ……。」



「…………。」




小林の目に…


うっすらと涙が浮かんでいた。




「…まあ、頑張れや!野球ばっかが全てじゃねえ。人生を謳歌しろよ!」




「……ハイ。」




「…ったく…、わざわざこんなこと律儀に報告しに来やがって。真面目なんだか何だかなあ~…。……けど、授業に遅刻はするな。あと、サボるな!担任が嘆いてるぞ?」