ただひとつ。Side Story

訪れたのは、野球部が練習するグランドで……




彼の姿を見つけた小林が、ゆっくりと歩み寄ってきた。





「…なんだ、やっぱり入部するのか?」




「…いや…、その逆です。」



「………。」



「…俺…、ずっと野球が好きでした。」



「…知ってるよ。あんなに生き生きしてたんだから。」



「…野球の楽しさは…親父が教えてくれました。」



「……ん…。」



「…けど、野球ばっかじゃなかったんスよ。」



「………?」



「…大切なものは…他にもある。俺はこの高校で、それを見つけていきたいんです。」



「…もう『見つけた』って顔してるけどな。」



「…いえ、まだ正直わかりません。けど…、親父みたいにさ、誇れるような『何か』を…自分なりに模索していきます。」



「…そっか。」




小林は……


一息ついて、それからグランドで練習する生徒達を見つめながら…


目を細めた。