ただひとつ。Side Story

ベッドの上でひとり…




颯太は野球のグローブを手にはめ込んで、何やら考えこんでいた。



買った時の張りはもうなく……



使いふるされ、『ペッタンコ』になったそれは…、



昔、父がキャッチボール用に買ってくれた物だ。



もう小さくて、掌がはみ出している。



彼は思わず微笑して…


お世辞にも綺麗とは言えない字で、
【HAYATA】
と…
油性ペンで父親が印したその文字をじっと見つめた。



それから、


ただ、
ボールをひたすら自分の手から、もう一方の手へと…投げこむ。




「市川…ひより、か……。」



そっと呟き、彼は本棚へと視線を移した。



グローブをベッドに置いて、本棚へと向かう。




手にとったものは……





卒業した小学校のアルバムだ。