ただひとつ。Side Story





俺は自分が野球部に入部しなかった事を、既に後悔していた。



グランドから響く練習音と部員の声に…



懐かしさが込み上げる。



ボールを真芯でとらえた時の小さな手の痺れ、


ライナーに食らいついてついたユニホームの泥。



夢中になっていた中学時代の頃は……



それが勲章のように感じていたものだった。



全てを何かに捧げるような…



そんな懸命さは、今はない。



そのかわりに……




深い、闇の中に囚われていくような気がして……



怖かった。



『市川ひより』の存在を、俺の高校生活の一部としてとらえることの難しさを……




思い知った。