ただひとつ。Side Story

いよいよその状況に堪えられなくなった颯太は、顔を机に突っ伏した。



こうすれば、もう顔をみなくても済むからだ。





「…………。」




ところが……


それがかえってアダとなった。



誰とも会話をしなくなったせいで……



今度はハッキリと女子の会話が聞こえてきたからだ。




『…マジか…。』



後にひけない気がして、結局そのまま……



彼女の声を盗み聞きするするようなハメになった。





「まこって髪染めないの?綺麗な黒髪~。」


「う~ん。髪長いから自分で染めるの難しいよね。かと言って美容室行くと高いし…。」


「わかるわかる!」


「ひよりは?自分で染めた?」


「うん。手に泡乗せてぐしゃぐしゃっとしてあとはジャーッと。」



『……長嶋茂雄…?』



颯太はひよりのあまりにも抽象的な説明に、うっかり笑いそうになった。





「へえ、綺麗に染まったじゃん。」



「そうかな。そうならいいけど…。」



「ちーちゃんは?」



「私?市販のだよ~。これ、自毛で通してる。」



「うそ~、バレないもん?」



「頭髪検査の前に部分染めしてごまかすから平気~!」


「あははっ!私もソレしようかなあ~!」




『………。』



楽しそうに盛り上がる彼女達の会話を聞きながら…


颯太は次第に罪悪感が湧いてきた。



間違っても恋愛話は聞きたくないと…


ひたすら祈った。




「まこ、それ一口ちょうだい。」


「いいよ。」



「いつもこれ美味しそうに飲んでるからどんな味か気になっちゃった。」



「イチゴ系大好きなんだ~。」


「…ふ~ん。あ、おいし。」


「でしょ。」



「ひよりは案外大人だねえ。コーヒーブラックじゃん。」


「だってこのメーカーのカフェオレ甘すぎて…。」