ただひとつ。Side Story

颯太は1階のオープンスペースで、昼休みを過ごしていた。




購買で買ったパンと、すぐそこで買った炭酸飲料を飲みながら……


クラスメイトと何やら賑やかに騒いでいた。



……と、



背中に何かがぶつかってきた。



「あ。…すみません。」



女子生徒が彼に謝る。


どうやらすれ違う際にぶつかったらしい。



「いえ…。」



チラッとそちらに目をやった颯太の動きが一瞬……


止まった。




その相手が…



まこであったからだ。


もちろん、彼女がひよりと親しいことくらいは…知っている。



颯太は自分の動悸が早まっていることを……



十分自覚していた。




「お前ラッキーじゃん。なんかまこちゃんマジいい匂いするし。」



健が鼻をならす。



「…変態っ。」



「何か言ったか?」



「いーや。」



「あ、そう。」




まこは隣りのテーブルの、彼とちょうど背中合わせになる場所に腰を掛けた。

その隣りの席は…
まだ空いている。




「…ひよりちゃん来たりして。」


「マジ?」




わざと健に合わせて喜ぶふりをする。





そして…



「…ひより、こっちこっち!」




予想通りの展開が…


待ち受けていた。





「…うお~っ。」


健が歓喜の声を上げる。



なんせ思惑通りに…健からよく見える所に、ひよりが座ったからだ。



一方の颯太は気が気じゃない。



少し動けばぶつかるその距離に……



ひよりがいるのだから。




隣りの友人と話す度に、嫌でも彼女が視界に入る。




至近距離で見るひよりは……



昔と変わらぬ、意志の強い眼差しで……



誰から見ても、『かわいい』と…
そう言いたくなるような華やかな笑顔。





「………。ねみ~…。」