ただひとつ。Side Story




春陽が優しく颯太の頭上に降り注いでいた。




桜の蕾をぼんやりと眺めながら、ゆっくりと帰校する。


そう、
平和で穏やかな日々の訪れを心のどこかで願いながら……。




…が、




「お前も今帰りか?」




「……平和を返せ。」



そんなつかの間の楽しみを堪能する暇もなく…、聞き飽きた声の主に、彼はがっくりと肩を落とす。




「なんだそりゃ?一人たそがれてんじゃね~ぞ。」




横に並ぶ和志をほぼ無視して、今度は早足で歩いた。



これじゃあ情緒も何もあったもんじゃない。




「なあ。お前部活は?決めた?」



「…いや、入んないし!」



「マジ?野球は?」



「…もう十分青春を謳歌したからいーんだよ。」



「……甲子園、連れてってくれるんじゃなかったの?」



「…誰がそんなこと言った?」



「………。健っ!」



「…ならあいつに頼め。」





「だってあいつも入らないんだって~。つまんないじゃん。…女の子と遊びたいとかなんとか……。」



「………。」



…和志と全くの同類である。




「あのさ、俺は俺でしたいことあんの!」


「…え~、初耳っ。」


「うるせーなあ。お前こそ卓球でインハイ出りゃいーじゃん。」



「…無理っ!それに…女の子と遊ぶ時間ないじゃん!」



『…どいつもこいつも…【女】かよ。』




「…へ~。まあ、ガンバレ。」



「……言われなくても。それにいーか、ウチのクラスの女子レベルハンパね~んだぞ。」


「…あっそ~。」




『また始まったか……。成長ねーな。』




「【まこ】と【ひより】。マジかわい~し。」




「………!【ひより】って…。」



「…なんだ?知り合い?」



「違うけど…。」



「もうダチになった。それが性格もいいんだよ、冗談通じるし!」


「………。」