ただひとつ。Side Story





「じゃあ颯太くん、うちら後で行くから……。」


「ん。わかった。」



目的地に着いてすぐに…


私達は颯太くんと別れてトイレへと駆け込んだ。


「…ひより、ハードスプレー持ってる?」


「うん、バッチリ!」


「……自分で言っといてなんだけど…、手紙忘れてそれは持ってくるって…。」


「…私もそう思う。でも仕方ないよ、ないものはないんだから…。」


「…ひよりらしくなってきたじゃん。」


「…そう…?てか…、時間ナイッ!」


「ホントだよ~。何であんなに渋滞してたのよ~!」


「悔やんでも仕方ないっ。」


「はい、そーでした!」



私達はお互いの髪をセットし合い、それから…


鏡と睨めっこしながら化粧を仕上げた。




「……。どんだけ忙しいのよ、アンタ達。」



背後から、聞き覚えのある声……。


鏡越しに、その声の主と目が合う。









「…楓っ!」


マスカラを片手に、ひよりは満面の笑顔で振り返った。



「…やだ、ひよりマスカラ目の下にくっついてるよ?」


楓は、鞄から綿棒を取り出すと…


ひよりの目元に何かを施した。




さすが…


準備いいっていうより…


完璧主義者。



「まこの髪もさあ、前髪編みこみした方がゼッタイかわいーし。」


「…そう?」


「……ちょっとピン外すね。」



彼女は慣れた手つきで、次々と作業をこなす。



「……よし、できた!」




彼女はそこでようやく…


満足そうに、笑顔を浮かべた。




「ってかマジ久しぶり!」


…今更!?


「ホント久しぶりだね、楓!」


…おいおい…、こっちもか…。



「まこは相当久しいね。」


「……。そうだね。」



素でマイペースな楓と、天然のひより……。


思わず、つられて笑ってしまった。