ただひとつ。Side Story

「………。まあ、会場に着いてからでも間に合うし、大丈夫だろ。」


おちあった颯太くんは…


そんな私達を見て、必死で笑いを堪えていた。





ホテルを出ると、直ぐさまタクシーにのりこんだ。





道中……



何故かみんな、無言を貫いていた。


第三者がいるせいか、遠慮しているようだ。



タクシーは、ただひたすら海沿いを走り続ける。


私は窓の外の風景をじっと眺めていた。



「………。」



綺麗な海…。





「あっ…!」


突然…


ひよりが叫んだ。



「「どうした?」」


颯太くんと私の声とがシンクロする。


しかし…


彼女はそんなこと気にする様子もなく…それどころか次第に青ざめていく。


「……!大丈夫?ホント、どうしたの?」


「……た。」


「…え?」


「…忘れた…。」


「…何を?」


「………手紙…。」


「「…………。」」



「…ホテルの…鞄の中にいれたままだった…。」


「………。」


そういえば…


大事そうにしまっていた。




「…だ、大丈夫だよ。いっぱい練習したじゃん!」


「でも、内容覚えた訳じゃないし…。」


「大丈夫!あとは真っ直ぐ気持ちを込めて言えばいいんだもん。…ひよりの言葉は、きっと誰よりも響くって!ね、颯太くん。」


「……そーだな。『つたない言葉だろうと何だろうと…好きな奴に言われた事はリアルに響く』。」


「………。」




不思議…



颯太くんのたった一言が…、


ひよりの顔に安堵の色を戻した。


「…うん。そうだよね、まずは…呑もう!!」


「…何でそうなるのよ~。」


「…呑めば勢いづくじゃん?その方が上手くいくかもしれない!」


「…お前さあ…、それが一番心配だんだよ。頼むから終わるまで我慢しろ。


「えー…。いい考えだと思ったのに…。」