ただひとつ。Side Story

「……欲しかったのになあ。…思い出に。」



「…お前さあ…、勝手に思い出にすんなよ。」



「………?」



「ホラ、これ……。」



俺は自分のポケットに入っている何かをギュッと握りしめて…



加藤の目の前に差し出した。



「…これ……?」



「お前、絶対、欲しいって言うと思って…とっておいた。しかも、第2ボタンだぞ。」



「………っ。」



加藤の顔はくしゃくしゃに歪み……



受けとったそのボタンを、両手でさも大切そうに……


何度も、何度も、
握りしめた。




お互いの気持ちは……

やっぱり、まるわかりだった。



「…俺…、ずっと変わんねーよ。ずっとずっとこのままの自分でいる。だからさ…」



胸が…熱い。





「…だから、お前も変わんなよ。いつかまた会った時に…、こんなことあったなってまた馬鹿みたいに笑ってさ、言い争ってさ、そーゆー風にずっといようぜ。」



「………うん!」





目元から、熱い何かが流れ落ちた。



俺は懸命にそれを拭い……



最後にニコッと笑ってみせた。




「…泣くなよ~、名残惜しくなるじゃん。」



加藤のアタマをくしゃくしゃに撫でる。



こんなことできるのも……



これが最後だと知っていたから。






「…じゃあ、『またね』、和志。」



「おう。…また!」






…加藤……。



俺は間違っていたのかな。



だって、別れってこんなに悲しいもんだって…



俺は知らない。





彼女の後ろ姿を…




俺は、いつまでも、いつまでも………




見送り続けた。