ただひとつ。Side Story

朝永とはこっそり密会していた。



加藤には申し訳ないと思う気持ちと、周囲の目を盗んで会うスリルが……


中毒のようになって、俺はのめり込んだ。





おかげで冬休みは最高に楽しかった。



楽しくて…


楽しくて……



実は、ほんのちょっぴり、寂しかった。




なぜなら朝永は加藤とは違って、全てが受け身だから。



もちろんそれが可愛いところではあるが……、


日が経つにつれ、どこか物足りなさを感じるようになってきた。




俺が投げ掛ける言葉は、全て受け入れる。


「うん。」

「いいよ。」

…あまり会話の『キャッチボール』が成り立たない。



例えば手を繋ぐ。

…キスをする。



それすら抵抗も何もない。
(慣れてんのか?)




にこにこといつも…笑っていた。






何だか思うようにいきすぎて……



怖いくらいだった。







「和志、アンタ朝永さんと付き合ってんの?」




3年に進級し、春の陽気にうつらうつらとしていた時だった。



突然、加藤が俺に話し掛けてきた。




「…何で?」



「目撃談がありまして。」


「ふ~ん……。」



加藤は、実は俺に負けないくらいの情報通だ。



「『ふ~ん』って…。どっちよ。」



「別にどっちでもお前にゃ関係ねーだろ。」



「…それはそうだけど……。」



加藤は明らかにふてくされている。


…勝手な奴だ。自分から振ったんだろ?



それでも……



「良かったじゃん、ずっと憧れてたもんね。」


「ハイハイどーも。」


「……なにソレ。ムカつく~。」


「うるせーな、おりゃまだ眠いんだ。睡眠妨害~。」