ただひとつ。Side Story






「お前さあ、そんなに緊張してんの?」


「うん。だってさ、初めてだし。こういうの。」


「ふ~ん。選手宣誓とかは平気なのに?」


「何それ。誰から聞いたの?」


「ひよりの母ちゃん!こっそり大会とか運動会やらのビデオ貸してくれるからすっかり俺はお前のファンになったよ。男前~!」


「……なんてことを…。あれはさ、決められた台詞をただ大声で言えばいいだけだもん。訳が違うよ!」


「…そうかぁ?」


「そうだよ!」


「…そっか。」


「…うん。」




「「………………。」」




「…なあ。」


「ん?」


「お前さあ、まこちゃんと最近話してるか?」


「…?メールとかはしてたけど、会うのは久しぶりだしなぁ…。」


「お前らは親友だよな。」


「……?何、今更?」


「…例えばだけどさ、まこちゃんとどんな話するの?」



「…どんなって…。近況?仕事のこととか、ご飯のおいしい店の話とか…?」


「普通だな。」


「そりゃあ世間話だもん。」


「なら、俺のこととかも話すの?近況報告っ。」


「う~ん…ほとんどしないな。まこもあんまり恋愛話はしてこないから。」


「…ふ~ん。それって言いづらくしてんじゃねーの?」


「え?」


「せっかく応援してもらって俺らこうして付き合ってんのに…ノロケのひとつもなきゃ気ぃ遣われてる感じで、自分の話もしづらくね?まこちゃんが【話さない】んじゃなくて…、ひよりが【言わない】。そんなこと繰り返してっからお前らややこしいんだよ。」


「…………。」


「…違うか?俺の言ってること、少しでも否定できるか?」


「…できない…。」


「…ったく…。お前は言葉足らずなんだよ。頼むからもう優等生のフリはやめてくれ。」


「………。」


「無理なら無理って…、嫌なら嫌って言わないと。でなきゃ俺はまた見失ってしまう。」