ただひとつ。Side Story

「悪かったね、うじうじしたウジ虫で。」


「待て、ウジ虫って…。」


「付き合ってからロクな会話もしてないじゃん!昔はもっと普通に話してたのに……。何よ…、こんなんだったら友達のままでいればよかった。」



…おいおい?



「…馬鹿っ!も~キライ!!」



加藤の目からは大粒の涙がこぼれ…



俺は思わずたじろいだ。



「…かと…。」



バシンッ!



…と、大きな音をたてて、俺の左頬に痛みが走った。



「…サイテー!」



捨てゼリフを吐いて走り去る加藤の後ろ姿を…


俺はただ黙って見送ることしかできなかった。



「…何だよ。」


ワケ…分かんねー。


俺に一体どうしろと?



「…めんどくせー…。」



ポロっと…


本音がこぼれた。




……オンナはよく分からない。





そもそも加藤は…


ハッキリサッパリしていて、それでいてオンナらしさも兼ね揃えていて…



だから、好きになったはずなのに……。





俺は…




呆然と、その場に立ち尽くした。






「…サイテーだな、ほんと。」



「…あ?」



ボソッと呟かれたその声に…


いらつきながら、振り返る。




「……ぉお?」



そこには…


待ち人の中でもまず有り得ないだろうと思っていた人物…



『青山』が立っていた。




…つーか…、




何でこんな時ばっか話し掛けてくるんだ。




「…見てたの?」


「…デカイ声で言い争ってたし…、嫌でも聞こえた。てか、彼女泣いてたな。」


「………。」



加藤を『彼女』と認識しているのは…



コイツくらいか?




「…めんどくせーよな、ホント。」