ただひとつ。Side Story

「…うわっ、浮気者~!ひよりに告げ口するぞ~!」



そう、言いながら…


体中が熱を帯びていた。



「マジで?それだけは勘弁して!」


「どうしよっかな~。」


「…わかった、アイスおごる!しかも苺の!」


「…え、何で知ってるの?苺好きだって。」


「ん?高校の時、ひよりがまこちゃんに買うのがいちご牛乳だったから。」


「…よく、覚えてるね。」


「…基本的に見聞きしたこと、忘れないもん。」


「へぇ…。」


「ひより寂しがってたぞ。まこちゃんが自分の『恋ばな』全くしなくなったって。神尾くんのことあったから?だから二人とも、負い目感じて遠慮してんの?」


「…そんなつもりは…。」


「…それとも、まだ報われない想いってヤツをしてるの?だから、ひよりに言えないとか…?」


「………。」


「…何、俺の顔に何かついてる?」


「ううん。ちょっとびっくりして…。」


「何で?」


「だって、ホントに覚えてるんだもん。」



「…?何が?」


「…言った本人よりもハッキリ覚えてそうで怖い。」


「いや、そこまで俺頭よくねーし。」


「それは知ってる。」


「…おっつ…。」


「…な~んて、ね。偉そうなこと言ってごめん。」


「謝んなって言ったじゃん。」


「あ。そうか…。」


「で?実際はどうなの?…ひよりには言わないから教えて。」


「………。」


「…全く…。つくづくまこちゃんも強情だな。ちょっとそのまま待ってて。すぐ戻るから…。」



そう言って颯太くんは……


パタパタとスリッパの音をたてながら、走り去った。




「………。」


顔がまだ熱いのは、きっと風呂あがりのせいだ。


…そうじゃないとしたら、このやり場のない不思議な感情を…


肯定してしまうことになる。




私はマッサージチェアから降りると、フロントの側にあるソファーに腰掛けた。



「……ふわふわだ…。」