ただひとつ。Side Story

「ここ、混浴だってさ。…颯太くんいるかもネ。」


「……。はあ?!聞いてないっ。」


「嘘、冗談っ!」


「…まこ。からかってる?」


「いーえ、そんなつもりはないよ~!」


「…もうっ。先行くよ?!」


「……あれ、着替え持っていかないの?」


「……あ。」



彼女は手ぶらのまま、部屋のドアノブに手を掛けていた。


「…やだなあ。ごめんごめんっ。」


恥ずかしそうに下を向く彼女が何ともかわいらしい。



「馬鹿だねえ、ホラッ。」


私は、着替えの入った袋を…


ひよりに手渡した。





温泉を堪能した後、長湯が苦手は私は…


ひよりに断って、先にその場を後にした。



入口の脇の自販機で、緑茶を買う。



私はそれを、一気に口にした。

…汗ばんだ身体に、冷たいお茶が染み込んでいく…。




「……。」


マッサージチェアが目に入る。


幸い…


周りには誰もいない。



今がチャンス…、と、

私は迷わずそこを陣取った。




「……おっ。」




目を瞑ってどのくらいたっただろうか…。


さぞかしマヌケな顔をしていたことだろう。




頭上から聞こえる声に…


私は一瞬で凍りついた。





「やだ、颯太くん。いつからいたの?!」


「え。今さっき。」


「……本当に?」


「…いや、ごめん。5分くらい経ってたかも。」



悪戯っ子のようにニヤリと笑っている。


「…嘘、やだなぁ…早く声掛けてよ。」


「…ごめんな、あんまりにも気持ち良さそうだったから…、声、掛けそびれた。」


「…かなり恥ずかしー…。」


「なんで?全然気にすることねーよ。寝顔ですら綺麗だった。」



サラリと…



颯太くんは言い放った。


「…そ、そんなこと言ったらひよりに怒られるよ。」


胸のドキドキが…


おさまらない。