「こんにちは」

 こっちよりも先に声を掛けられ、僕は慌てて言葉を返した。 

「こんにちは」

 何とも間抜けな返事である。こんにちはの後にもう少し気の利いた台詞は無かったものか。僕は必死に言葉を探した。しかし、次の言葉はやっぱり彼女のほうだった。 


「乗っていい?」

 昼下がりの日差しの中でそれはまばゆいような笑顔であった。 

 僕は、左手を思いっきり伸ばし、助手席側のドアを内側から開いた。