部屋に帰ると、由美が私を待っていたかのように、
笑顔を向けている。

「あっ菜月?おかえり!
今日お祭りあるみたいよ
後で一緒に見に行きましょ!」

由美は友夜に頼んでいた事に、触れて来ることは無かった。

由美は分かっていても、
気づかないようにしてくれていて、
自然と優しく接してくれた。

私は思わず、抱えきれない悲しみに、由美に飛びつき泣いた。

「菜月…いいよ
つらい時には、今は私が
菜月のつらい気持ち受け止めるから…」

由美はなぜ私が泣いていたのか聞いてくる事は無かった…。

―。

それから夕方になり、
浴衣姿に着替え
由美と二人で、
会場に向かった。

下駄慣れしていなかったのかすぐに、足が痛くなる。


男子が私達を見つけ、
近づいてきた。

「今度は遅刻しなかったのねっ」

「あったり前だろ!何回も同じ事しねぇよっ」

友夜は、少し見栄をはっている。

「もう二人共早く行きましょ
ほら健が先に行ってしまったわよ、ほらっ早く!」

由美は、私と
友夜の腕を掴み、
先に進んでいく。