幽霊が見えるようになりました。

ガラス張りの扉は黒いカーテンで閉じられていて、中の様子が覗えない。


ここに立って、ずっと体育館の様子を眺めるわけにもいかないし...


そう思っていると、突然、扉から手が生えてくる。

一瞬、びっくりして肩を震わせたけれど、直ぐにそれがユキコだということに気が付く。


その手は体育館の横に移動するように、指をさす。


体育館から見て左は、学校の敷地を示す仕切りがある。

体育館とその仕切りの間は自転車置き場になっている。

けれど、どの門からも遠いここは利用する生徒が少なく、雑草が遠慮なしに生えていた。


一応、コンクリートで舗装されてはいるが、長年の傷みで出来たヒビから逞しく生えている。

駐輪場の様子を立ち尽くして眺めていると、体育館の壁からユキコが姿を現した。


『これはまた、随分と遅いご登場で...』

不機嫌そうな表情で腕組みをするユキコ。

言葉の一つ一つに刺を感じる。


遅れてしまってことは、悪かったと本当に思う。

けれど、なにもそこまで怒らなくてもいいではないか。