教室に足早に鞄を取りに行く。


廊下に西川さんの姿は無く、掃除をした後の少し埃が舞う教室で本を読んでいる。

その後ろ姿は寂しさを感じさせるような、小さな背中だった。


近くまで歩いていくと、足音で気が付いたのか西川さんはこちらに振り返る。


「すみません。大事なお時間をあたしなんかの為に割いていただいて。」

椅子から立ち上がって平謝りをし始める。


「そんなことより、用事は?」

前置きなんてどうだっていい。

リュックを背負って、帰る準備も万端だ。


「昨日、体育館にいましたよね?」

西川さんは急に真剣な目でこちらを見つめる。

窓から心地よい風が吹いてきて、西川さんの髪を靡かせる。


突然、真剣になった目から逸らすことが出来なくて、妙な間が出来る。

質問の意味もよく分からないし...


「あたし、昨日の昼休みに第二体育館に入っていく中野君を見たんです。」

髪の毛を耳に掛けて、視線を体育館に向ける。