「あ、いや...ここで手短に話せませんから、放課後、教室に残ってくれませんか?」

西川さんの表情は俯いて髪に隠されてみることが出来ない。

その言葉を言い終わると、俺の斜め左後ろの席に戻っていく。


なんとも言えぬ高揚感に見舞われて、気持ちが浮いてしまう。

六時限目の授業の内容が全く頭に入ってこない。

これは重傷だ。

放課後、残るように言われただけでここまで浮足立つとは思わなんだ。



担任が号令を掛けて、それぞれ解散する。

掃除の持ち場に移動する奴、部活に向かう奴、走って帰る奴、色々いる。

俺はニ階渡り廊下の掃除当番だから、同じ班の奴と喋りながら向かう。


西川さんは何も当番に当たっていないらしく、教室前の廊下の隅で静かに待っている。


箒掃除の手を抜いて、早めに掃除終える。

早くどんな内容の話なのか気になって仕方がない。


期待しているわけではない。

あんな言葉を溜めた言い方をされたら、誰だって気になるはずだ。