「あ...あ...」

さっきとは違い声は出ているが、言葉にならない。

なんとか前を歩く友達の服を掴んで呼び止める。


「どうしたんだ?」

振り向く友達の視線を階段の下へと促すために、指でそこを指す。

けれど、その指の先には何もいなくなっていた。


「なんだよ?」

当然、何も見ていない友達には僕が急に騒ぎ出したようにしか思えないのだろう。

不思議そうにこちらを見つめている。



説明しようにも、余計に変な奴だと思われてしまうだろう。

第一、口下手な僕にさっきの出来事を上手く説明しろというのは難しい話だ。


「い...いや。何でもない。」

苦笑いをしながら、掴んでいた服の裾をパッと離す。