幽霊が見えるようになりました。

短時間で精神に多大なダメージを受けて、もう体育の授業をうける気力がほんの少しも残っていない。

出入り口の上に付けられた時計を見るとあと一分で授業が始まる。


全力疾走で運動場を横断すれば間にあうのかもしれないけれど....


もうそんな行動を起こす気にならない。

どうだっていい。

もうなんだっていい。


目の前にいるこいつもなんだっていい。


世の中には常識では説明できないことなんてきっとたくさんあるのだから。

それをいちいち気にしていたら限がない。


『ねぇ....君の名前なんていうの?』

興味津々といった様子でこちらを見る幽霊。


幽霊に自己紹介をするという、なんとも不思議な状況に複雑な気持ちになる。


「中野 泉....です。」

どんな表情をすればいいのか分からず、引き攣った笑顔になる。


『へぇ....泉..くん』

嬉しそうに俺の名前をゆっくりと口にする。