『入学式で君を見かけたとき、すぐに私のことが見えてるって分かったよ。』

嬉しそうに頬を少し赤らめて、髪の毛をいじっている。


普通の女の人だったなら、こんな態度をとられて喜ばない奴はいないだろう。

けれど、それは普通の女の人に限ることで、こんな得体のしれない奴には対応しない。


なんで、俺が見えていたことに気付いたのか聞きたかったけれど、生憎、今の俺は声を出すことが出来ない。

『なんで見えてるこたが分かった知りたい？』

目をきらきらさせて、顔をあと数センチのところまで俺の顔付近まで近付けてきた。


聞きたい。

そう思った。

けれど、俺の考えていたことが見透かされているみたいで少し怖かった。


『あのね、入学式の時に挙動不審な行動をとってたのが君一人だけだったんだよ。』

女はクスクスと馬鹿にしたように笑う。