春...高校の入学式、その言葉だけで少し胸が高鳴る。

校門の前に来ると、本当に入学したんだという事実を噛み締める。


けれど、この高校は割と近所にあるから、さっきから見知った顔がちらほらと見える。

俺の友達の多くもここに入学してくる。


勿論、大地も....

井上は中学校から私立に行ってしまったので、どうしているのかは知らない。



「おーい!いずみー!」

後ろから聞きなれた声が俺の名前を呼んでいる。


振り返ると自転車を押しながら走っている、大地の姿が見えた。

立ち止まって、大地が追い付くのをその場で待つ。


「どうかした?」

大地が追い付くと、思わず質問をしてしまった。

やっぱり、最初は『おはよう。』だったかな....

「いやー、ここに来るまでに知り合いに会わなかったから、ちょっと心配になってさ..」

少し照れくさそうに大地は髪をクシャっと触った。