自分にも面倒くさいものが備わっていることに気が付かされる。


あーあ....

なんで僕、あんなに怖がっていたんだろう?


落ち着いて見てみると、月明かりで照らされた廊下はよくある映画のワンシーンのような景色だし、窓から見た夜の空は星がキラキラと瞬いていて、とても綺麗だ。


なんだか笑えてくる...



それから廊下や階段を順に通り過ぎていき、ようやく大地達が待つ出口に辿りついた。

その時にはもう、汗で服はビショビショになっていた。


でも、もうそんなことどうでもよくなっていた。


大地は頻りにこういう状況になった理由を聞かれたが、出口に向かう途中、すっかりそのことを忘れて、ただ夜の星を堪能していた。

だから、返事を所々濁して誤魔化した。


『お疲れ。』

突然、けれど確かに後ろの方から声が聞こえた。

可愛らしい女性の声だった。


けれど、振り返ったその先には誰もいなかった。