言葉が詰まって、すんなりと喋れなかった自分を恥ずかしく思う。


「いや、靴紐が解けてることに気付いたからさ。」

そう言って、しゃがんで靴紐を結び直す友達に理解したという合図に頷いてその場を離れる。



列に続いてしばらく歩いても追いついてくる気配がないので、心配になって振り返って後ろの様子を覗うと、友達の姿が見えない。


いや、姿が見えないのは僕たちが出口に向かうために階段を下りたり、廊下を曲がったりしているので当たり前なのだけれど...

靴紐を結ぶのにここまで時間が掛るものだろうか?


今だ、靴紐の付いた靴を履いたことのない僕にはよく分からないけれど、あいつってそこまで不器用な奴だったかな?


どちらかというと器用な方だったような....

微かな記憶を手繰り寄せて、友達の人物像を思い描こうとする。


あいつとは話す相手がいない時に話すくらいの仲で、悪く言い換えると、都合のいい時だけの友達である。

多分、相手の方も大地の友達の一人で仲は悪くない人物....という感じ方で、接しているだろう。


これはあくまでも僕の推測にすぎないけれど、大体、僕の周りにいる友達はそんな風に感じているだろう。