「おい、聞いてないだろ?」

そこまで考えが至ったところで井上の声に遮られる。


「途中からね。」

そう返事をすると、考えていたことに思考を戻す。

目の前にいる井上は不機嫌そうに何かブツブツと言っているが、全く耳に入ってこない。


やはり、今、優先すべきことは早急にここから脱出することだろう。

幽霊が見える理由なんて考えていたってしょうがない。


周りを見渡すと、目に見えて怯えている奴、冷静を装っているが足がガクついている奴、他にも沢山いるけれど、殆どの奴が白い影を見ているらしくこの旧校舎に入る前の活気が感じられない。


「なぁ、そろそろ帰らないか?もう大分見て回ったことだし。」

そうこの集団を率いるリーダーと言っても過言ではない大地に提案してみる。


「そうだな!みんなも疲れてきたみたいだし。」

すんなりと提案を受け入れてくれたことは良いのだが、大地の言動を見るにここで何が起こっているのか、全く分かっていないようだ。