朝に覚えたての字で『おはよー』『行ってきまーす』と書いていたのが、帰りに見るとそれが、『ただいま』に変わっているのは、何とも微笑ましい。

私は、そこに『おかえり』と書く。


そして近所のおばさんの、『おかえり』と言う声が聞こえてくる。




ずっと街に馴染めなくて、肩身の狭い思いを感じていたけれど、少しずつこの街で歩く道が風が空が人が、好きになってきた。


いつか、心の底からほっとできる、そんな景色になる気がする。













家の郵便受けを覗くと、封筒が一通入っていた。


リンゴを頭に載せ、にっこり笑うくまの絵の消しゴムハンコが、隅に押された淡い水色の封筒。




私は可憐な花の香りがするその封筒を、胸にそっと当てると、急いで玄関のドアを開けた。